広告 03.ファンダメンタル編

流通株式時価総額とは?調べ方と計算方法とプライム市場で重要な理由

今まであまり聞くこともなく、意識もしてこなかった「流通株式時価総額」という言葉ですが、投資家の中で口にする方も増えてきましたし、ニュースも目にするようになってきましたね。

東証の市場再編の中で、プライム市場の新たなルールの中に「流通株式時価総額」という項目が入ったことで注目されています。

ただ、日ごろからこの「流通株式時価総額」また「流通株式」というを言葉を聞かないのは、近しいデータとして浮動株があるため浮動株を参照している方が多いと思います。

 

1. 流通株式時価総額とは「流動性の高い株式からみる企業価値」

流通株式時価総額とは、上場企業が発行している株式のうち所有が固定的でほとんど流通可能性が認められない株式を除いた株式から計算する時価総額です。

つまり上場会社の役員や自社株、ご家族などが保有している株はなかなか市場で売買されるケースが少ないため、流動性が高い株とは言えません。

これらの株は日ごろから売買されることはなく株式として発行しているが流通しない株という認識になりますので、これらを除いた流通している株式数から考える時価総額は日々売買される可能性が高い中での企業価値ということになりますね。

 

流通していない株は機関投資家や海外投資家、個人投資家が売買できないため、流通していない株が多いと投資家がその株を買わないので株価も変動しづらくなります。

流通している株が多いほど機関投資家や海外投資家が投資をしてくれるため、流通株式時価総額が大きい株はそれだけ日々投資家が認めた時価総額で取引をされていることになりますね。

 

ポイント

冒頭でもご紹介しましたが、「流通株式」「流通株式時価総額」「流通株式比率」などは東証が活用する情報であり、四季等では取り扱われない数値になります。

四季報では浮動株や特定株の考え方を利用しており、こちらは四季報の株主欄で数値を確認することもできます。

 

 

2. 流通株式時価総額の調べ方

流通株式時価総額は、東証が扱っており四季報等では扱っていないことを1章でご紹介しました。

東証は特に各企業の各種数値を発表しているわけではありませんので、東証で利用されている「流通株式時価総額」について発表しているデータは残念ながらありません。

また、流通株式数を正しく計算することは難しいため、流通時価総額をご自身で計算するにしてもおおよそのデータを作ることにとどまってしまいます。

 

一方で、四季報では「浮動株比率」「特定株比率」「発行済み株式数」が公表されていますので、ここから似たような数字を作ることは可能です。

こちらは一覧でデータ提供をしていたり数値を拾うことが容易なため、どちらにしても正しい情報が得られないことや正しい数値を追求しても株式投資の成果に大きな影響が出ないため、四季報の情報を活用することで十分に足りると思います。

 

流通時価総額を把握するための計算方法については、次の章でご紹介します。

 

3. 「流通株式時価総額」と「流通株式」の計算方法(難しい)

2章でご紹介したとおり「流通株式時価総額」はご自身で計算しないとデータがありません。

ご自身で計算するのは大変ではあり、正しい数値がなかなか準備できませんが、正しい情報が取得できる前提でご紹介していきます。

 

流通株式時価総額を計算で求めるのは時間を要することと、慣れていないと難しいので簡単に浮動株を使って似たような数値を計算できる方法を4章でご紹介しますので、サクッと計算したい方は4章をご確認いただければと思います。

3-1. 「流通株式時価総額」の計算方法

流通株式時価総額の計算式は次の式ようになります。一般的な時価総額と同じですね。

 

ポイント

【流通株式時価総額】

流通株式数 ✕ 株価

 

3-2. 「流通株式」の計算方法

流通株式数は、考え方がかなり複雑ですが次の式になります。

こちらの情報はご自身で「有価証券報告書」を確認していただき「株主関係の情報」の章を確認してデータを準備していただくことになります。

 

ポイント

① 発行済み株式数
- ② 主要株主が所有する株式(10%以上所有)
- ③ 役員等所有株式数
- ④ 自己株式数
- ⑤ 国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式
- ⑥ その他当取引所が固定的と認める株式

ただし、⑤の例外処置として、次の2つの軸での考え方が加味されます。

※直近の大量保有報告書等において、保有目的が「純投資」と記載されている株式
※5年以内の売買実績が確認できる株主の所有分に限る

図で表すとこちらのようになります。

出典:東証より

 

3-3. 「流通株式」を有価証券報告書から計算する

有価証券報告書から実際に流通株式に関する情報を取り出してみましょう。

今回は「7816 スノーピーク」の有価証券報告書を参考にしましょう。有価証券報告書は四半期ごとに発表されますが、株主については本決算は必ず掲載がありますが、その他には中間決算で掲載される場合があるといった程度で、リアルタイムの情報や四半期ごとの情報を収集することはできません。

本決算の有価証券報告書を見ていきましょう。

 

①発行済み株式数

→ 「有価証券報告書 第4-1-(1) 株式の総数等」の欄を確認します

事業年度末現在の発行数が確認できますね。

 

② 主要株主が所有する株式(10%以上所有)

→ 「有価証券報告書 第4-1-(6) 大株主の状況」の欄を確認します。

大株主欄に所有株割合が記載されていますので10%以上の株を保有している株主を確認できますね。

 

③ 役員等所有株式数

→ 「有価証券報告書 第4-4-(2) 役員の状況」の欄を確認します

役員一覧の欄で、役員全員の所有株式数が確認できますね。

 

④ 自己株式数

→ 「有価証券報告書 第4-1-(7) 議決権の状況」の欄を確認します

自己名義所有株式数で自己株式数を確認することができますね。

 

⑤ 国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式

→ 「有価証券報告書 第4-1-(6) 大株主の状況」の欄を確認します

②と同じ場所ですが、ここから金融機関や保険会社、事業法人を確認します。
どれが金融機関に該当するのか。などについては記載がないので、ご自身で確認して判断することになります。

 

⑥ その他当取引所が固定的と認める株式

→ 「有価証券報告書 第4-1-(6) 大株主の状況」の欄を確認します

こちらも④と同じ場所で確認します。

ただ、「当取引所が固定的と認める」ということなので、結果的には非公開なので推測するしかありませんね。。。

 

4. 浮動株比率から「(参考版)流通株式時価総額」を計算(サクッと)

3章でご紹介したとおり、東証の考え方から「流通株式時価総額」を計算したり調べようとすると答えを出すのに時間がかかってしまいます。

「流通株式時価総額」= 流通株式数 ✕ 株価

 

上記の計算式を浮動株に直すとこちらになります。

「(参考版)流通株式時価総額」= 浮動株数 ✕ 株価

 

発行済み株式数と浮動株比率をすぐに四季報で調べることができますので、計算は簡単です。

ただし、浮動株が掲載されていないケースもありますので、四季報の株主欄を確認します。

 

 

4-1. 浮動株が掲載されているかどうか確認する

たとえば、3章で例にした「7816 スノーピーク」を四季報の株主欄で確認します。

すると、四季報の株主欄には「・・%」と掲載されています。こういった株は浮動株が掲載されていないためサクッと計算できません。。。

残念です。。。

 

浮動株比率の調べ方はこちらを参考にしてください。

 

4-2. 浮動株比率から浮動株数を計算する

一方で、「6315 TOWA」の場合には掲載があります。

発行済み株式数と浮動株比率から浮動株数を計算していきます。

 

発行済み株式数(25,021千株)✕浮動株比率(16.9%)

= 浮動株(4,228千株)

以上から、

 

浮動株数(4,228千株) ✕ 株価(1,996円:2021/07/22時点)

= (参考版)流通株式時価総額 (84.39億円)

 

こちらであれば、手元に電卓があれば計算できますね。

 

4-3. 流通株式と浮動株の違いを簡単に

流通株式時価総額の代わりに浮動株を使って参考値を計算できるというお話をしましたが、流通株式と浮動株の違いを簡単に確認しておきましょう。

 

「流通株」と「浮動株」の違いを一言でいうと、「市場に流通し売買される株式のこと」になります。

目的は一緒ですが「東証の考え方で計算する流通株」と「四季報の考え方で計算する浮動株」ということで、計算式がそれぞれの会社の考え方によって若干異なっているということです。

 

流通株式はこちらで求められますね。

ポイント

① 発行済み株式数
- ② 主要株主が所有する株式(10%以上所有)
- ③ 役員等所有株式数
- ④ 自己株式数
- ⑤ 国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式
- ⑥ その他当取引所が固定的と認める株式

ただし、⑤の例外処置として、次の2つの軸での考え方が加味されます。

※直近の大量保有報告書等において、保有目的が「純投資」と記載されている株式
※5年以内の売買実績が確認できる株主の所有分に限る

 

ポイント

浮動株は四季報では「固定的に株式を保有している株式を発行済株式数から減算した株数」と表記されています。

四季報では「発行済み株式数-特定株数」が浮動株数になるわけではないため、浮動株も流通株と一緒でご自身で正しく計算するということを考えず、掲載されているデータを活用するという考え方にした方がいいですね。

 

5. プライム市場で「流通株式時価総額」が重要視されている理由

プライム市場で流通株式時価総額が重要視され、投資家がこの言葉を耳にするようになったのでは、プライム市場の条件の中でこの流通株式時価総額の基準が大きく変わったからです。

東証一部の上場基準や維持をする際の今までの流通株式時価総額は10億円でした。

それがプライム市場になると経過措置のうちは10億円ですが、経過措置が過ぎると100億円という10倍の価値を求められます。

 

流通株式時価総額を上げるためには、流通株式数を増やすために役員や自社株を売却して増やすことは簡単ですが、同時に株価もあげていかなければいけません。

この努力と結果が伴わないとプライム市場に残ることができなくなります。

プライム市場の基準に届いていない企業にとって一番難易度が高い基準が、この流通株式時価総額の基準をクリアすることだと思います。

 

さいごに

東証の市場再編の中で東証一部であった銘柄がプライム市場に残れないことで、株主にとって不利益があると言われています。

TOPIX等に組み込まれないことでその銘柄の流動性が一気に落ち込んだり、需給のバランスが崩れたり、機関投資家や外国人投資家が売却してくる可能性も考えられます。

 

今まで株式投資をする中で気にしてこなかった方が大半だと思われる「流通株式時価総額」ですが、こちらの内容を気にするのも市場再編がおこなわれる移行期だけかもしれません。

ご自身が保有している株がプライム市場に残り続けることができるかどうかについて、しっかりウォッチしていく中で必要に応じて活用していただければと思います。

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▶「株式投資×IT活用」を考える兼業投資家
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