株式投資を始めるといつかたどり着くのが「機関投資家」という言葉です。
株式投資で勝つか負けるかの裏付けに「機関投資家の動き」ということを意識しだすと、投資についてある程度の勉強をされている時期かと思います。
「機関投資家って何?」「機関投資家が重要ってどういうこと?」「機関投資家の動きをどう知ればいいの?」など、機関投資家について疑問を持たれていると思います。
機関投資家について詳しい解説はさまざまなページがありますが、本記事では株式投資で必要な知識に限定してご紹介をしていきたいと思います。
注意ポイント
本記事を読む前提として、機関投資家について追及を続けてもなかなか結論に結びつきません。
大切なことは、株式市場で投資をする際にこういった投資集団がいて、そういう集団がいる中で取引が成立しているということを知っておくことですね。
目次
1. 機関投資家とは「資金を集めて運用する団体」
機関投資家を簡単にいうと「お客様から預かった資金等を運用する大口の投資家(法人)」です。
私たちのような個人投資家は自己資金だけで投資をするし、人からお金を集めて投資をしてはならないというルールがあります。
一方、年金運用や生命保険の運用、投資信託やNISAなど多くのお客様から資金を預かって増やしてお返しをするような制度をたくさんご存じだと思います。
これらを運用しているのは国の機関や国内外の法人であり、いわゆる機関投資家です。
そこにはプロの投資家さんたちが収益を上げるために活躍しています。
機関投資家といっても公的なものもあれば営利のものもありますので、目的や投資の手法も様々であり幅広いですね。
注意ポイント
「機関投資家」と一言でいいますが投資の世界では様々な定義があるため、「機関投資家」という言葉を使っても人によってイメージが全然違うケースもありますので、その点に注意しておきましょう。
2. 主な5つの機関投資家の特徴とその傾向
具体的な機関投資家についてみていきましょう。
機関投資家にはこれといった定義がありませんが「運用資産の規模が大きく、比較的長期投資」であることが共通点です。
機関投資家として一般的に言われている5つについてご紹介します。
ポイント
【主な5つの機関投資家】
・年金基金
・保険会社(生保・損保)
・金融機関(銀行、信託銀行、証券会社など)
・投資顧問会社
・海外投資家(法人)
※短期投資の「ヘッジファンド」は含まないことが多い
2-1. 年金基金
年金基金の場合には、年金の加入者から集めた保険料を元手として運用をしていきます。
日本の機関投資家の中で一番有名なのが「GPIF = 年金積立金管理運用独立行政法人」です。
年金基金を元手にできる厚生労働省管轄の団体になります。
130兆円以上の資産を持つと言われており、世界トップの資金を持つ機関投資家と言われています。
ポイントは「元本を守り、年金加入者に決められた年金を支払うことが必要」ですので、ローリスクで運用益を出していくような運用が考えられます。
2-2. 保険会社(生保・損保)
生命保険会社や損害保険会社は、保険に加入している方が支払う保険料の一部を元手として運用をしていきます。
保険会社は株式投資専門ではありませんので保険料を様々なものに投資をして資産を増やしていきます。
ポイントは「元本を守り、予定の利率に対する還元が必要」ということであり、ローリスクで契約内容に準じた成績以上の結果を残すような運用が考えられています。
2-3. 金融機関(銀行、信託銀行、証券会社など)
銀行や信託銀行・証券会社などは、預金や投資信託で集めた資金を元手として運用をしていきます。
銀行や信託銀行も株式投資専門ではありませんので集めた資金を様々なものに投資をして資産を増やしていきます。
ポイントは「預金は元本を守りながら利益を出していく」ということであり、基本はローリスクで運用益を出していくような運用が考えられます。
一方で、投資信託は「運用方針は購入する際にお客様が選択するもの」で、「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」「インデックス型」など様々なタイプがあり、その方針に合わせて運用されていきます。
2-4. 投資顧問会社
投資家等から資金を預かって、その資金を元手として運用をしていきます。
投資顧問会社は「投資の助言」が主力業務ではありますが、「個人投資家からお金を預かって投資家に代わって運用(投資一任)」「投資ファンドの運用」のどちらも行うことができます。
最近はやりのロボアドバイザーも投資一任の一つになります。
その他、富裕層向けの金融商品を出したりして、投資ファンドの運営もします。
ポイントは「運用方針は購入する際にお客様が選択するもの」で、「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」「インデックス型」など様々なタイプがあり、その方針によって運用されていきます。
2-5. 海外投資家(法人)
日本の株式市場の7割を占めている海外投資家の大半は、海外の法人であり機関投資家に該当します。
海外投資家は集めた資金を元手に運用しています。
海外投資家の実態は、海外の年金基金や金融機関・ファンドなどです。
(参考)ヘッジファンド
機関投資家は「中長期の投資で安定的な運用」を目指しています。
ヘッジファンドは「短期的な投資でハイリスク・ハイリターンの運用」を目指しています。
ヘッジファンドは利益を追求するためにショートポジションを取ったり、レバレッジを活用したりするため、他の機関投資家とは性質が異なります。
3. 機関投資家が占める割合
東証が発表している「投資部門別売買状況 - 株式年間売買状況 - 東証第一部」の2021年のデータによると、投資家の種類を4つに分けると売買代金は次のような割合になるそうです。
機関投資家を「法人」「海外投資家(大半が法人)」とすると、日本の東証一部(現在のプライム市場)では、機関投資家が全体の約75%の売買をしていることになります。
投資部門別売買状況-東証一部(2021年)
投資家の種類 | 売買代金の割合 |
法人 | 7.8% |
個人 | 21.8% |
海外投資家(※1) | 69.6% |
証券会社 | 0.8% |
※1:海外投資家に99.8%は法人
(参考)東証の株式年間売買状況はこちら
3. 機関投資家の動向を知り投資へ活かす3つのポイント
機関投資家はファンダメンタルの観点から優良企業を探して分析をした上で、中長期的な視点で投資をしていきます。
基本的には上昇トレンドの中で、ある程度まとまった資金を入れながら利益を追求していきます。
「機関投資家に勝つ」ということを考えるのは次の4つのポイントから難しいのですが、機関投資家の動きと同じ動きをすることで利益を得ることを目標にするのは良いことですね。
3-1. 資金が圧倒的に多い(影響が大きい)
GPIFは世界最大の機関投資家でもあるように、機関投資家は圧倒的な資金を持っています。
一度に大量の注文は入れませんが、何日もかけて調整しながら徐々にある程度の量の株を購入していきます。
銘柄を見て出来高が急増した場合などには、機関投資家が参画したのではないかと推測できるポイントがあります。
また、出来高が急増した日以降の出来高が以前と比較してある程度増えている場合には、継続して買い集めをしているのではないかと考えることもできます。
3-2. 情報量が圧倒的に多い
機関投資家はファンダメンタル分析をしたり、直接投資予定の会社とミーティングするなど、IR担当が許す範囲で全力で情報を集めます。
情報を収集するプロもいて情報収集が早いので、個人投資家が勝てるとすると業績予想やビックチェンジに気づくところぐらいです。
逆に、機関投資家が入っている銘柄に一緒に入っているのであれば、その銘柄を保有していることで自信につながりますね。
3-3. 割安での買い集めが必要なので小型株は買わない
資金量が多くその資金を工夫して割安な状態で株式投資につなげないといけないため、出来高が少ないような銘柄を選ぶと一気に価格が上昇してしまいます。
時価総額で300億円くらい、最低でも100億円を目安にそれ以上の銘柄で、日ごろから出来高が多い銘柄を選ぶことが多くなります。
機関投資家が入ってくる銘柄は大きな上昇トレンドができることがあるので、機関投資家が入りそうな時価総額の銘柄を選ぶと上昇トレンドに乗れる可能性が高くなりますね。
4. 機関投資家の動きを把握しようとしてもできない
機関投資家のことを勉強し始めると「機関投資家が入ったかどうかをどのように見分けるか」という疑問について答えが欲しくなります。
機関投資家は自分たちが儲けるために、機関投資家が特定の銘柄を購入したと分からないように取引をしてきます。
個人投資家である以上は機関投資家が参画したかどうかを明確できないので、把握しようとしない方がいいですね。
5. 機関投資家の手法から自分の投資法を見直す
機関投資家について知ったところで具体的に活用ができないと意味が無いと考えられると思います。
機関投資家が参画するという前提で銘柄を見ていくと、ご自身の投資法に変化を加えることができるかと思います。
こちらの4点に注意して、上昇トレンドが始まったらしっかりとチェックをしていきましょう。
ポイント
①時価総額が300億円以上(100億円以上なら可能性あり)
②出来高が急増したことを確認する
③継続的に出来高が増え、上昇の時に出来高が増える
④5%以上保有すると大量保有報告書が出るので確認する
さいごに
機関投資家とはどんなものか、どんな影響があるのかについてご紹介をしてきました。
機関投資家とは「資金を集めて運用する団体」であり、そこでは素晴らしいファンダメンタル分析がされていて、その裏付けの中で投資をしているから上昇トレンドが形成でき利益が取れるということですね。
それに準じた銘柄を選定して機関投資家と共存することができれば、きっと大きな成果につながっていきますね。