相場が開く前の8時~9時に板を見ると「株価が動いていて、始値がどこで決まるのだろうか」と良くも悪くも不安に思うことがありますよね。
「始値(はじめね)」は1日の取引の最初に値が付いた価格ですが、相場が閉まっている間に注文を受け付ける意味では、前場と後場の取引開始時は同じ動きをしますね。このタイミングを寄付き(よりつき)といいます。
始値の決まり方が、この前場と後場の寄付きで使われていますので、どのような決まり方をしているのか、わかりやすく解説をしていきたいと思います。
目次
1. 条件は3つだけ!株の始値の決まり方は「板寄せ方式」
株価が決まる方式には「板寄せ方式」と「ザラバ方式」の2つしかありません。株価の決定はシンプルですね。
その中で「始値の決まり方」は「板寄せ方式」になります。
条件内容 | |
条件1 | 成行の売り注文と買い注文すべての注文が約定すること |
条件2 | 約定値段より高い買い注文と、約定値段より低い売り注文が全て約定すること |
条件3 | 約定値段において、売り注文または買い注文のいずれか一方の全てについて約定すること |
(参考)始値の読み方は「はじめね」
1日の一番最初についた株価のことを「始値」といい「はじめね」と読みます。
2. 始値が決まるプロセス【わかりやすく解説】
始値が決まる直前の注文の板が次のような場合、始値の決め方についてプロセスをゆっくりみていきましょう。
始値の決め方を解説する板
2-1. 「成行注文」の差を確認して約定(条件1)
まずは1章の条件1のとおり、成行の買い注文と売り注文を約定させます。
「買い気配の成行(30,000株)-売り気配の成行(20,000株)」ですので、買い気配の成行が10,000株残ります。
約定した20,000株の価格は始値が決まった時点で、その価格が適用されます。
そして、この時点での出来高は20,000株ですね。
2-2. 「成行注文の残」と「指値」を約定(条件1)
続いて、成行注文は指値注文よりも優先される原則がありますので、原則に従い、残った成り行き注文を約定させていきます。
買い気配の成行が残っていますので、売り気配の指値の一番下の価格から順に約定をさせていきます。
この場合は、一番価格の低い997円(2,000株)から約定させ、そのあと998円(3,000株)・999円(8,000株のうち5,000株)の株と約定すると成行10,000株をすべて約定させることができます。
ここで約定した10,000株の価格は、先ほどと同様に始値が決まった時点で、その価格が適用されます。
そして、このときの出来高は10,000株、計30,000株ですね。
注意ポイント
指値は指値をした価格のみでの約定ではなく、指値した金額より有利な価格での約定であれば約定します。
よって、997円~999円の指値の約定は、仮に1,000円が始値の場合には有利になるため1,000円で約定することになります。
この時点では、まだ始値が決まっていないので保留ですね。
2-3. 残った指値注文を順次約定させる(条件2)
成行注文がすべて約定すると、売り気配・買い気配の両方に指値が残っている価格について対応していきます。
1章の条件2となりますが、約定価格より高い買い注文と低い売り注文をすべて約定させていきますで、一番高い注文と一番低い注文を約定させます。
ここでは、2-2の注意ポイントで記載しましたが、指値の価格より有利に約定できますので、価格は無視して考えていきます。
一番高い買い注文(1,003円・600株)と次に高い注文(1,002円・2,000株)を、一番低い売り注文(999円・3,000株)と約定させます。
ここでの出来高は2,600株です。
続いて、同様に残った中で一番高い買い注文(1,001円・3,000株)と、一番低い売り注文(999円・400株)を約定させます。
ここでの出来高は400株です。
同じことを繰り返していきます。
残った中で一番高い買い注文(1,001円・2,600株)と、一番低い売り注文(1,000円・15,000株)を約定させます。
ここでの出来高は2,600株です。
以上のように、一番高い買い注文と一番低い売り注文が同じ価格になるところまで繰り返していきます。
ここまでの出来高は35,600株ですね。
2-4. 買い・売り注文が同額になったら最後の約定(条件3)
2-3までのように、高い買い注文と安い売り注文を約定させていくと同額で買い注文と売り注文が並ぶ状況まできます。
最後は1章の条件3ですね。
約定価格で、売り注文または買い注文のいずれか一方をすべて約定させることになります。
この場合、1,000円で買い注文が30,000株、売り注文が12,400株ですのでこちらを約定させます。
ここで約定させると1,000円の注文は、買い注文が17,600株残り、売り注文は0株になります。
ここでの出来高は12,400株ですね。
以上のように同額まで注文を約定させていき、最後は一方をすべて約定させることでいつも場中にみるような板になります。
2-5. 始値が正式に決定
買い注文と売り注文に対して条件1~3を適用させていくと、こちらの板のようになりますので、始値は1,000円ということになります。
最後に2-4で約定させた価格ですね。
以上から、始値は1,000円、始値の時点の出来高は50,600株になりますね。
3. 始値が9時に決まらないと特別気配へ
前日の終値を基準とした値幅制限を超えることはありませんが、値幅制限内であれば始値がいくらになるのかは決まっていません。
相場が始まってから2章のプロセスを踏んで瞬時に始値の価格を決めに行くのですが、買い注文または売り注文が多い場合には値を付けないことがあります。
9時の時点で値が付かない場合、5分ごとにに気配値が上がるまたは下がっていきます。そして売り買いが一致して初めて始値が決まります。
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さいごに
株の取り引きをしているとどうしても板を見ることがありますよね。
朝イチは8時~9時の板の動きが気になってしまいますし、このあとどのように始値が決まって値がついていくのだろうか。ということは、良くも悪くも気になることがあります。
とくに保有している銘柄にニュースが出たり、発表された決算が事前予想と異なる点がある場合など、始値が9時に付かないケースも珍しくありません。
始値を決めるための「板寄せ方式」を知っていたとしても、なかなか株式投資の勝率には直接影響を与えませんが、値動きの想定が少しできるようになるのではないかと思います。